日本人はほとんどの年代でカルシウムが不足
厚生労働省が実施している国民栄養調査によると、 1歳が70歳までのほとんどの年代で、カルシウムの1日摂取量が「日本人の栄養所要量」を下回っています。かろうじて、7歳から14歳までの小中学校で給食を食べている年代だけが、ほぼ所要量に達していますが、そのほかの年代はほとんど所要量を下回っています。
このカルシウム不足は今に始まったことではなく、じつはずっと長く続いています。日本人のカルシウム摂取量は、これまでに一度も所要量を満たしたことがありません。
食生活の乱れは、カルシウムが不足しやすい
日本の土壌や水にはカルシウムが足りないので、農作物中のカルシウム含有量が少ないともいわれています。日本とアメリカの土壌を比較してみると、確かにアメリカの土壌の方がカルシウムを豊富に含んでいます。しかし、同じ種の植物ならミネラルの含有量に大差は見つけられませんでした。
それよりも日本人の食生活に問題があるといえるのではないでしょうか。その1つとして、健康食として世界から注目されているごはんを中心とした日本食の食習慣が、牛乳や乳製品に馴染みにくいということもあげられます。
日本人は乳製品の摂取が少ない反面、昔から豆腐などの大豆製品や海藻類・小魚などの海産物などでカルシウムを補っていたのが、最近ではこれらのミネラルが補いにくいファーストフードや加工食品の摂りすぎが指摘されています。さらに昼食などの外食を麺類や丼のような1品料理ですませることが多くなっていることも問題となっています。
国民一人当たり、あと200cc牛乳を飲めば、カルシウム不足は解消できると考えられています。また大豆製品や小魚、海藻類を今より2割増ぐらい食べると、カルシウム不足は少しは改善すると思います。
カルシウム摂取量の現状 |
(第6次改訂 日本人の栄養所要量) |
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体内のカルシウムの99%は骨や歯の構成成分
体内に吸収されたカルシウムの99%は、骨や歯の構成成分となっています。のこりの1%は血液中にあって、神経系の働きを調節したり、ホルモンの分泌や血液凝固に関連するなどの重要な働きをしています。骨にはカルシウムの貯蔵庫としての役割もあり、血液中のカルシウムが溶け出してこれを補います。
骨は、常に「骨形成」と「骨吸収」をくりかえして、日々つくり変えられています。つまり、骨に沈着しているカルシウムは出入りが自由で、食事や運動習慣、加齢などによって丈夫にも脆くもなるのです。一方、歯に沈着したカルシウムは、骨のように動くことはありません。一度形づくられた歯は、生涯そのまま。骨と歯では同じ構成成分であっても、ずいぶん事情が違います。
35歳までは骨密度を高めて「骨貯金」をする時期
人間の骨は、20歳くらいまでに骨の太さと長さが決まります。そして、個人差はありますが34〜35歳くらいまでに骨密度が決まってしまいます。
35歳くらいをピークにして骨の密度は低下していきますが、その間にも骨にカルシウムが沈着する「骨形成」は行われiいます。しかし、その量よりも、カルシウムが溶け出していく「骨吸収」の量のほうが多いので、しだいに骨密度が低下していくのです。しかし、35歳くらいまでにできるだけ密度の高い骨をつくっておけば、高齢になっても骨を丈夫に保つことはできます。これを貯金に例えて、「骨貯金」と呼んでいます。
骨貯金では、35歳の時点での骨密度を高めてくことも大事ですが、同時に中高年以降にカルシウム摂取を心がけて、貯金の残高を目減りさせないよう心がけることも重要です。
35歳をすぎると、それ以上に骨の密度を高めることはむずかしいのですが、元の状態に限りなく近く保つことは可能です。
骨の形成に必要な栄養素も補って、しなやかな骨に
骨を作るのに一番重要な栄養素はカルシウムですが、たんぱく質、マグネシウム、鉄、亜鉛、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンDといった栄養素も骨の形成に重要な働きをしています。
たんぱく質が不足して、カルシウムなどの無機質成分だけで骨をつくると、ガチガチに硬い骨ができて、無理な力がかかると簡単に折れてしまいます。ところが、たんぱく質などの有機質成分が含まれた骨には、粘り気があります。無理な力が加わっても、たわむことによって力を逃がすことができるのです。骨の形成に必要な栄養素を補うことで、丈夫な折れにくい骨にすることができます。
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骨はカルシウムだけではつくられない。たんぱく質、マグネシウム、鉄、亜鉛、そしてビタミンC、ビタミンD、ビタミンKなどをバランスよく摂取することが大切。 |
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年代別のカルシウム摂取
体重あたりの必要量は最も多い
0歳から2歳までの乳幼児期は、骨の形成が盛んで、体重あたりのカルシウム必要量は一生の中で最大になります。カルシウムとたんぱく質が十分に摂取できるように心がけて、丈夫な骨をつくりましょう。
不足すると背が伸びないことも
成長期にカルシウムが不足すると、身長の伸びが悪くなることがあります。また、細いきしゃな骨ができて、成人以降に骨折しやすくなるほか、腰痛やひざの痛みなどが起こりやすくなります。
骨密度を高める「骨貯金」の時期
卒業後に一人暮らしを始めると、食生活がおろそかになって、栄養のバランスが悪くなりやすいものです。20歳ごろに骨の形はほぼ決まりますが、体の中身が充実していくのはこれから。カルシウムが不足すると、骨密度を高めることができません。
ピークをすぎても、カルシウム補給を
骨密度のピークは35歳くらい。以後、骨密度は低下していきますが、カルシウムを補給することで目減りを小さくすることができます。カルシウムを補給し続けることが大切です。
体調が落ち着いたら取り戻す努力を
閉経後の1〜2年は、ホルモンの急激な変動の影響で骨密度はガクンと低下します。これは防ぎようがないので、体調が落ち着いてから現状を維持できるように、カルシウム摂取に努めましょう。女性ホルモン様作用のある大豆イソフラボンなどには、骨密度の低下をゆるやかにする効果があります。
間食やサプリメントで栄養補給を
高齢になると食事量が減り、消化吸収力も衰えるので、栄養素が不足がちになります。専門家の栄養診断を受けて、食生活の内容を確かめてみることです。間食でカルシウムの含まれるものを食べたり、サプリメントなどで栄養を補うのもよい方法です。
吸収率は大差ないものの1回に食べる量が問題
カルシウムは牛乳などの乳製品、大豆製品、野菜、魚などに含まれていますが、体内への吸収率は個人差が大きいのが実情です。同じ人でも、カルシウムの不足状況や体調によって吸収率が変動するので、一概にはいえません。
全般的な傾向を食品同士で比較してみると、牛乳などの乳製品を100とした場合、大豆製品の豆腐は100、豆乳は80〜100、キャベツも100、にんじんは60〜100と、大差がないという結果が得られています。小魚は52、ほうれん草は18〜40とやや低くなっています。
しかし、こういった吸収率ばかりでなく、1回当たり食べる量も問題です。牛乳や豆乳ならば1回に200ccくらいは飲めますが、小魚や海藻は一度にたくさんは食べられません。吸収率と1回当りの食事量を合わせて考えながら、カルシウムを摂るようにするとよいでしょう。
食物繊維が大腸でのカルシウム吸収を高める
かつては、食物繊維は腸内でカルシウムなどのミネラルを吸着して体外へ運び出してしまうので、吸収の邪魔をしていると考えられていました。ところが、最近では、腸内環境をよくするような食物繊維はカルシウムなどのミネラルを溶けやすくするため、大腸での吸収に役立っているという考え方が主流になってきています。ただし、多量に食物繊維を摂ると下痢を起こしやすいので、適量摂ることが大切です。
また、高齢になると消化吸収能力が低下して、カルシウムの吸収率が下がることもあります。加齢にともなって食事量が減って、栄養不足から消化吸収能力が下がっていることも多いので、たんぱく質やビタミンD、ミネラルを補うことで、カルシウムの吸収率を上げることも可能でしょう。
授乳期後にしっかりとカルシウム補給を
妊娠中や授乳中の女性は、胎児の発育や母乳分泌のために、十分なカルシウムが必要です。このため、従来は妊娠中・授乳中にカルシウムを多めに摂ることがよいといわれていました。ところが、最近の研究では、この時期にカルシウムを多量に摂取しても、骨から溶け出るカルシウムの減少を防げないことがわかってきました。むしろ、乳製品を摂りすぎて肥満に悩む妊婦さんが多いことから、授乳期の後に、それまでに失われたカルシウムがすばやく回復されるように、カルシウム目安量をしっかり補うことが推奨されてします。 |
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ミネラル全般の足りない分はサプリメントで補給
骨の形成には、カルシウムばかりでなくたんぱく質やビタミン、ほかのミネラルなどさまざまな栄養素が必要です。食事から摂ったほうが多様な栄養素を摂取しやすいので、まずは毎日の食事の内容を点検してみてください。専門家に栄養診断してもらって、6つの食品群がバランスよく摂れているかどうかを確かめることも大切です。
高齢になると、食事量が減って栄養のバランスが保ちにくくなります。間食の回数を増やして、1日4〜5回の食事でバランスを保っていくのもよい方法です。それでも栄養不足になるようなら、サプリメントで補うとよいでしょう。
また、ミネラルは全般的に摂りにくい栄養素ですから、カルシウムばかりでなく、ほかのミネラルが不足している可能性もあります。亜鉛や鉄、銅などを組み合わせたマルチミネラルをサプリメントで補給することは賢い摂取方法といえます。
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目安量: |
性・年齢別体重基準値をもとにして体内カルシウム蓄積量、尿中排泄量、経皮損失量の合計から見かけのカルシウム吸収率で割った値。 |
目標量: |
目安量と2000年度以降の国民栄養調査のカルシウム摂取量の中間の値。 |
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カルシウムの吸収を高める成分ツイントース
ツイントースは糖の一種。カルシウムと一緒に摂ることで、吸収を高めるばかりでなく、カルシウムを体内にしっかり留めて骨の形成を助ける機能成分です。これらの機能は、ヒトにおいての効果が実証されています
ツイントースとカルシウムの摂取により、骨密度の変化率が上昇した。 |
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